理解増進
『「2020」とその先の世界を見据えた 核セキュリティの課題と方向性』の開催について
原子力の平和利用を推進するにあたり、原子力安全の確保と同時に核物質が軍事転用されないこと(核不拡散)、核物質を使ったテロや原子力施設がテロリストに狙われないようにする核セキュリティがとても重要です。その重要性に対する理解を深めることを目的に、JAEAでは、毎年、国際フォーラムを開催しています。フォーラムでは、各国の政府関係者や核不拡散・核セキュリティの専門家による、その時々の課題に焦点を当てて、講演やパネルディスカッションを通じて、原子力平和利用と核不拡散・核セキュリティに係るさまざまな課題や対応方策についての理解を深めるとともに、JAEAの核不拡散・核セキュリティへの取組についても発信をしています。
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(1) 趣旨・テーマ
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『「2020」とその先の世界を見据えた 核セキュリティの課題と方向性 』
核兵器や核物質、放射性物質を使ったテロのことを、「核テロ」と呼びます。この核テロの脅威が現実のものとならないようにするために講じられる様々な措置が「核セキュリティ」です。
2009年1月に米国大統領に就任したオバマ氏は、同年4月、チェコの首都プラハで、米国が先頭に立ち、核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意を明言しました。オバマ氏は、核兵器保有国が核兵器を使う可能性は限りなく低くなる一方で、テロリストが核兵器を入手して使う可能性は高まっており、これが世界の安全保障に対する喫緊かつ最大の脅威であると述べました。
そして、管理されていない核物質を4年以内になくすこと、核セキュリティサミットを1 年以内に開催することを提案しました。核セキュリティサミットは、2010年4月に第1回が開催され、第4回が開催された2016年4月までの6年間にわたり核テロ防止に大きな成果を残して終了しました。
世界的に核テロ防止に向けた関心が高まっている中、日本では2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるなど、国内外の要人及び多数の観光客が集まり世界中が注目する大規模イベントが続きます。そこで、テロの防止に万全を期する必要があり、とりわけ、重要なインフラ設備の警備や、放射性物質等の管理を強化する必要があります。
テロ未然防止の3原則は、テロリストを入国させないこと、テロの拠点を作らせないこと、テロを起こさせないことです。そして、未然防止のためには、核セキュリティの知識を持った人材の育成も課題です。また、ドローンやサイバー攻撃など、新たな脅威への対応も求められています。
「核セキュリティ」を取り巻くこのような状況を踏まえ、以下の2つのテーマについて議論を行います。
核物質や放射性物質を使ったテロ対策として、原子力施設の核物質防護や病院等のRI使用施設での、いわゆる1st Line Defense対策が取られてきています。また、水際における2nd Line Defenseや大規模なイベント時の核セキュリティ対策についても対応が進められています。これら核セキュリティ確保に向けた対応の現状と課題、将来の方向性について議論を行います。
国際的に活発な議論が行われている、新型炉、小型モジュラー炉やその燃料サイクルについて、核不拡散及び核セキュリティに関する制度的、技術的課題について議論を行います。また、核不拡散・核セキュリティ体制のSustainabilityを確保する上で重要な人材の確保、若手研究者の育成について議論します。
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2019年12月4日(水) 10:00〜17:30
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時事通信ホール(東京都中央区銀座5-15-8 時事通信ビル2F)
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開会挨拶(10:00〜10:10) 児玉 敏雄 日本原子力研究開発機構 理事長
基調講演(2件 10:10〜10:50、10:50〜11:30)
① 核セキュリティの現状と課題、将来の方向性(仮題)
Eleanor Melamed 氏(米国エネルギー省国家核安全保障庁(DOE/NNSA)グローバルマテリアル安全保障局 副局長補佐)
Brian Boyer 氏(IAEA(国際原子力機関)原子力エネルギー局 原子力発電部 INPRO課長)
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ISCNの活動報告 直井 洋介 JAEA・ISCNセンター長
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(パネリスト)
野呂 尚子(JAEA ISCN 技術副主幹)[モデレーター]
Roger Howsley 氏(WINS(世界核セキュリティ協会)代表)[ビデオ出演]
Charles Massey 氏(IAEA 原子力安全・セキュリティ局 核セキュリティオフィサー)
Eleanor Melamed 氏(DOE/NNSAグローバルマテリアル安全保障局 副局長補佐)
土屋 兼一 氏(警察庁 科学警察研究所 主任研究官)
鳥居 建男 (JAEA 福島研究開発部門 副ディビジョン長)
テーマ(1)では、核セキュリティ確保に向けた対応の現状と課題、核セキュリティ強化に向けた大規模イベント対策やドローン対策、核セキュリティ対策の持続性をどのように確保していくかなどについてディスカッションを行います。
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(パネリスト)
清浦 隆 氏(文部科学省 研究開発局 原子力課長)[モデレーター]
Brian Boyer 氏(IAEA原子力エネルギー局 原子力発電部 INPRO課長)
Mario Mendoza 氏(米国 テキサスA&M大学 大学院原子力専攻 アシスタント研究生)
相樂 洋 氏(東京工業大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所 准教授)
川﨑 信史(JAEA 高速炉・新型炉研究開発部門 研究副主幹)
次世代原子力システムの開発の現状と課題、次世代原子力システムの核不拡散・核セキュリティに関連する取組、若手研究者の育成の取組とその良好事例、若手研究者育成に対する大学の役割、COEと大学との連携の在り方などについてディスカッションを予定しています。
代表的な先進炉(IAEA資料)
